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家の窓から見れば近くても、山まで一直線の最短ルートが伸びているわけではない。
アスファルトで舗装された田舎道は、畑や田んぼ、近隣の住宅などを迂回する格好になっていて……。
都会とは異なる独特の匂いが漂う中、うるさいほどの蝉の鳴き声に囲まれながら、真夏の太陽に照らされた道路を歩くこと三十分あまり。
右手に立ち並ぶ木々の間に、茶色の道が見えた。かろうじて人一人が通れる程度の道幅で、標識の類いも一切ないが、これが目的の山へと通じる道。その入り口だった。
私は早速、その山道に入っていく。
野生の獣たちの専用道ではないにしても、人間の往来は少ないのだろう。あまり踏み固められていないらしく、靴底から伝わるのは、柔らかい土の感触だった。
左右の木々が夏の日差しを遮ってくれる分、先ほどまでと比べて、かなり涼しく感じられる。
ちょうど山道に入ったあたりで、蝉の鳴き声も聞こえなくなったので、それも気分的に夏っぽさを減らしたのかもしれない。
まるで世界が変わったかのような静寂だった。
とはいえ、さすがに山林の木々に防音効果はないはずだから、たまたま鳴き止むタイミングだったのだろう。
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