山で遊んじゃいけないよ

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     最初に「野生の(けもの)たちの専用道ではないにしても」と表現したけれど、ここはいわゆる獣道(けものみち)。  道は途中で、いくつかのルートに分岐していた。 「なるほど。小さな子供なら、これは迷子になってもおかしくないな……」  しみじみと呟きながら、私は歩き続ける。  子供の目線ではそこまで見えないかもしれないが、大人の目の高さならば、分岐地点からでも「こちらはすぐに行き止まり」と見えるルートがいくつもあった。  それらを()けながら、基本的には上へ上と、なるべく太い道を選んで進んでいくと……。  前方が明るくなる。  開けた場所に出たようだ。 「ほう……」  思わず感嘆の声が漏れる。  山頂ではないけれど、それに近い場所だった。小さな部屋くらいの広場で、見晴らしも良い。  ちょうど反対側らしく、うちの家は見えないが、似たような民家や畑が眼下に広がっていた。 「ある意味、ここが山登りの終点かな?」  なんとなく開放的な気分にもなり、私は無意識のうちに、例の歌を口ずさみ始めた。 「山で遊んじゃ、いけないよ。迷子になって、困るから。山は危険が、いっぱいだ。クマにイノシシ、悪いひと」  ちょうど二番まで歌い終わった、その時。  どこからか人の声が聞こえてくる。  すすり泣くような子供の声だった。    
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