山で遊んじゃいけないよ

　　　
　山で遊んじゃ　いけないよ
　　迷子になって　困るから

　山は危険が　いっぱいだ
　　クマにイノシシ　悪いひと

　民謡とか童歌(わらべうた)の類(たぐ)いなのだろうか。
　うちの田舎には、奇妙な小歌(こうた)が伝わっていた。

　歌詞の言葉遣いも、なんだかセンスがないように感じられる。
　こういう歌は普通、人から人へと伝播する間に少しずつ自然に改修されて、だんだん洗練されていくものだろうに……。
　ごく狭い地域にしか伝わらなかったから、そのような「自然に改修」が起きなかったのかもしれない。

　おそらく三番以降もあるのだろうが、私が知っているのは二番の歌詞まで。
　内容的には、山への立ち入りを戒める感じの歌だった。
　山林の多い地域であり、そのほとんどは国や県などでなく、個人の私有地だ。だからこそ、無断で山に侵入されないように、その種(しゅ)の歌が作られたのだろう。
　私はそう考えて、勝手に納得していたのだが……。