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✩.*˚
「《ボス・オルカ》?」
その名前を聞くとは思っていなかったので中途半端な反応になってしまった。
ここはラスベガスだ。アドリア海で名の知れた悪党の住処からは遠く離れている。
「裏の世界じゃ伝説的なイタリアンマフィアの大親分がラスベガスに何の用だ?蜂の巣になりに来たのかい?」
あいつの敵なんて大勢いる。直接恨みのある奴から、何もないがあいつの金に用のある奴まで千差万別だ。
自分の縄張りでも危ういってのに、悪党のひしめく街に何の用だ?
遊び場なら自分の縄張りの洒落た長靴の形をした国でも十分だろうに…
「今、ウチのカジノで遊んでるって話っすよ。オーナーの知り合いみたいで、招待されたんだとか…どうします、支配人?」
「オーナーからは何も聞いてねぇんだがな…
一応、金を落としてくれるならお客様だ。好きにしてもらって構わねぇよ。
まぁ、しばらく目を離さないようにしておけ」
部下の前では懐の広いところを見せたが、腹の中では虫が湧くようなゾワゾワしたものを感じていた。
《カポ・オルカ》が大人しくしてるなら問題ないが、問題はこの千載一遇のチャンスに厄介なお客様が来るかも知れないってこった…
俺の担当の日に何もしてくれるなよ…
そんな祈るような心持ちで警備室のモニターを眺めた。
今日は気の抜けない夜になりそうだ…
残業を覚悟した俺の元に、また望んでいない問題が転がり込んだ。
《カポ・オルカ》のご指名に、犬の糞でも踏んだような気分になった…
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