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✩.*˚
太陽のようなスポットライトがステージを照らしている。
砂漠に照りつけるような真っ白な光の届く範囲は異世界のように周りから隔絶されていた。
その異世界のようなステージは彼女によく似合うことだろう…
「…旦那、これでよろしいんで?」
「あぁ。無理を言ってすまなかった。オーナーにも満足だと伝えてくれ」
舞台を用意してくれた支配人に礼を伝えて、最高のショーの用意を進めた。
支配人はガラの悪い不真面目そうな男だったが、この砂漠の虚構の街を表しているような印象の男はこれで仕事のできる男だった。
深く踏み込まず、必要な情報だけを求めた。
世界の裏側を知る人間はそういった小賢しさが必要だ。
危険に対して鼻の利く男が少しだけ惜しくなった…
「ステージの用意を手伝ってくれてありがとう。君も彼女のステージを見るかね?」
「残念ながら、自分は責任者なんで、モニター室からお姫様のステージを見せていただきますよ」
「なるほど。その方が良い」
彼女の歌声は麻薬だ。麻薬は一時的な快楽には良いが、それを知ったが最後、魂を奪う死神になる。
彼は俺のそんな心配を他所に、自分の腕に着けた下品に光る時計を気にしていた。時間は有限だ。
「彼女を連れてくるよ」と言い残して彼女のエスコートに向かった。
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