「のびる」から「パニック」へ

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「会社を辞めない限り、家に戻ることはない」  夫の務める会社が都会へ移転し、夫は単身赴任の身となった。  ローンの残る持ち家で二人の子供はまだ中学生小学生だったため、夫について行くという選択肢も転職するという選択肢もあり得ないね、と相談して決めた。  本心はついて来て欲しかっただろうが。  単身赴任になって間も無くコロナ禍になり、急遽リモートワークの環境が整えられた。  10年以上前のことだが、同じ職場で私が働いていて出産時に辞める時、在宅勤務を試したが上手くいかなかった過去がある。  本気になれば出来るんじゃん、と思った。  遠く離れた地で帰省が許されない状況。  夫の周りでもコロナ発症者が増え心配していたが、ありがたい事に夫はコロナウィルスに感染しなかった。  ひとり暮らしでコロナ発症なんて、もうどうしたらいいのかわからない。  そうなった方々は、本当に大変だったと思う。  人の行き来の規制が厳しい頃は単身赴任先のひとり部屋で、規制が緩み長期休暇などに帰省すれば座敷を占領して仕事をしていた。  帰省時の在宅勤務でリモート会議が始まると、私達は息を潜めて生活する。 「ただいまー!ちょっと聞いてー!」なんて勢いよく帰ろうものなら、イヤホンマイクをした旦那の表情が曇る。
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