「のびる」から「パニック」へ

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「単身赴任者を、在宅勤務に切り替えるという話が出ている。早くて12月に」  コロナの騒動が落ち着きを見せた頃の、非常にありがたい話だった。  単身赴任を始めた頃の夫は、自分で夕飯を作っていた。  何故か惣菜を買う、という事をしなかった。  とはいえ、夏は野菜炒め、冬は鍋で、ほぼ毎日同じメニューではあったが。  お弁当も買わない夫のために、私はお昼のお弁当用にと煮物や和え物をお弁当カップに入れて冷凍、それをせっせと定期的に冷凍便で送っていた。 『作り置きレシピ』本を買っては、参考にしていた。  帰省時の最終日には朝から大量の日持ちする冷蔵物を夕飯用にと何種類か作り、保冷バックに入れて持たせた。大変な作業ではあったがこちらの夕飯も2、3日楽ができたのでそれはそれで良かった。  そんな生活も数年続けば疲れが出てくる。  だけどちゃんと食べて欲しい、その想いで何とか頑張っていた。  そんな矢先の在宅勤務の話。  ぱーん、と音を立てて『やる気』が飛んだ。  著しく向こうに送る宅配便の本数が減った。  ぶっちゃけ宅配便代も高いのだ。  そのうち帰ってくるなら少しの間くらい…なんて思っていたわけではないが、明らかに食事の心配をしなくなった。  というのもコロナ禍が落ち着いた頃から、夫の外食に行く回数が増えたのだ。特に週末。  やる気消失と外食増加はどちらが先かと言われたら悩むところだが、週末にちゃんと食べているならそれほど気にしなくても良いかな、と思うようになった。
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