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そう言ってから、その願いを込めて歌うと、人間はエナイの歌を信じてオコルドを殺し、切り刻み、焼いて、その場で食べました。
エナイも少年と一緒に食べました。
刃を向けられた瞬間、恐怖で慄き赤い瞳を泣きそうに潤ませ口をハクハクとさせるオコルドの表情をエナイは一生忘れないことでしょう。
エナイは、とてもいい気分でした。
そして、オコルドはとても美味しいお肉でした。
さらに不思議なことに、肉を食べた全員の疲労は回復し、元気がみなぎったのです。
「エナイの言うことは本物だ」
「エナイは神様なのかもしれない」
船乗りたちは口々に言い、エナイを崇めました。
エナイの音痴な歌は、きっと不思議な呪文なのだと思ったからです。
それからというもの、人魚は人間を狩る生き物ではなく、人間に狩られる側となってしまいました。
その後エナイは人間の女王となり、人魚から守る不思議な歌を歌う歌姫として祀られることとなりました。
どれほど音痴であっても、それがどれだけ不快なリズムであって、音であっても。
力さえあれば、人間にとってはどうでもいいからです。
そうしてエナイは、人間の国で人魚の食べ方を広める女王となり、人間の国で大切に大切にされましたとさ。
めでたしめでたし。
fin
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