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男の人魚でも持ち合わせていない美しさを持つその少年に一瞬見惚れたエナイでしたが、首をかしげ心配そうな表情をされたことで、自分の答えを待っているのだと気づき慌てて「うん、大丈夫」と頷きました。
そこは、人間の中でも裕福な暮らしをしている家だったようです。
運よく、エナイは良い人間に拾われていたのでした。
エナイが少女であることから、捨てられた少女だから何も知らないのだと思ったらしく、色んな事を教えてくれました。
家の人たちは、食事の方法や、服の着方、毎日お風呂に入ることなどを教えてくれました。
その生活は何もかも初めてで、それでいて、とても心地よく、エナイはここにずっと居たいと思いました。
そこで、家の人たちが人魚に困っているという話を聞きました。
海に魚を捕りに行ったり、荷物を運ぶために船に乗った人間が数人消えてしまうという話でした。
恐らくそれは、人魚たちに食べられてしまっているのでしょう。
「もしかしたら、私ならなんとか出来るかもしれません」
エナイの言葉に家の人たちは半信半疑ですが、藁にもすがりたい思いだったのでしょう。
エナイが船に乗ることを許してくれました。
「ここでよく意識を失うんだ」
エナイを心配してついてきてくれた美しい少年がそう教えてくれました。
そこは、人魚たちが人間を襲う一番のポイントでした。
そこで、エナイは「わかった」と言って、人魚の歌が聞こえ始めた瞬間、歌いました。
“人魚の歌を全て無効にしろ”という願いを込めて
聞くに堪えない音痴に人間は顔をしかめていましたが、人魚の歌が聞こえなくなりました。
「意識がなくならないぞ」
「眠くもならない」
「これはありがたい」
船乗りたちは、早速目的である漁業に専念し始めました。
すると、あろうことか、魚を捕る網に人魚が捕れたのです。
それはオコルドでした。
信じられないという様子で人間を見るオコルドは、海の中ではあんなに怖かったのに、船の上では無力でした。
それを見て、エナイは笑いました。
「人魚の肉を食べるとどんな病気も治るんですよ」
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