魔力0の物理バカ

12/18
前へ
/18ページ
次へ
 人間じゃない…?  何言ってるの?  どこをどう見たって人間でしょ。  頭にツノが生えてるわけでも無いし、尻尾だって伸びてない。  肌の色、目の形。  見れば見るほど人間だけど、どこが…?  ジロジロ見すぎてたせいか、彼は気恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いた。  まさか、サイボーグ?  いやいや、そんなはずない。  サイボーグは瞬きをしたりしない。  血管だって浮き出てないし、呼吸の仕方も人間とは違う。  じゃあ、もしかしてダンピール?  妖魔?  それとも、シャーマン?    …うーん  「な、何だよ」  「別に」  頭を傾げていると、教官は言った。  チョークを片手に持ち、黒板にスラスラと文字を書きながら。  「『ゾンビ』、って聞いたことはある?」  聞いたことはある、だって?  ゾンビくらい知ってますよ。  映画やゲーム、漫画にだってよく出てくるアレでしょ?  …ってか、そんなの答えるまでもなくない?  そう思い、あえて口にはしなかった。  それくらい知ってます  と、目では訴えた。  逆に知らない人がいるんですか?って、聞きたいくらいだったから。  「ごめんごめん。バカにするつもりはなかったんだ。巷で有名な「ゾンビ」は、“何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称”だと思うんだけど、ここで説明する「ゾンビ」は、ホラーやファンタジー作品などに登場する存在とはちょっと違う。僕が言いたいのは、あくまで「屍」っていう意味であって」  「それがどうかしたんですか?」  …まさか、彼が「ゾンビ」だって言わないよね?  ってか、急に何?  屍がどうとかって、いつものくだらない話が出てくるわけじゃないよね?  生憎、そんな暇じゃないんですけど。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加