いざ、せつ子街に!

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 熱を持ったままの足で、帰り路を歩いた。あれから一週間が過ぎたが、まだ何の打開策も見つかっていない。  最初のショックが消えると、次にやって来たのは母への怒りだった。今更ながら、いつも母は勝手だと気付いた。俺の都合や気持ちなどお構いなしだ。俺は怒ってもいい。反抗する権利があると思った。  だが振り返ってみれば、円満な家庭で、なんだかんだ大切に育てられた俺は、今まで母に対して本気で怒ったことがなかった。親に反抗するなんて、時間と労力の無駄使いだとさえ思っている。  本当にこのままでいいのか。反抗期の今を逃して、いつ母に対抗するというのだ。    試しに、クソババァと口にしてみた。するとたちまち、俺の泥まみれの靴下を手洗いする母の背中が浮かび、思わず涙腺が緩みそうになった。お前の母ちゃんでーべーそー、という他愛無い悪口にさえ本気で傷ついていた俺に、母を口汚く罵ることができるのだろうか。  すぐさま、弱気になった己に喝を入れた。何とかしなければ、俺はクラスの笑いものになる。母に青春をぶち壊されてもいいのか。怒れ、立ち上がれ、断じて阻止するのだ!  拳を握りしめ、ふと疑問が湧いた。母が商店街で、大勢の前に立って歌う。それがそんなにいけないのか? 個人の自由ではないか。笑うやつには笑わせておけ。人を馬鹿にするやつは、そいつが馬鹿なんだ。  理性と感情のはざまで押し問答を繰り広げるうちに、いつの間にか家に着いていた。
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