1. Xデーに殺された私

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 鉄の匂いがする。  ゼラニウムとローズのアロマは楓のお気に入りで、リラックスタイムにアロマストーンで香らせるのが最近のマイブームだった。  そのアロマの香りを台無しにするのは、嗅ぎなれない鉄の匂い。  楓は自室の座椅子に座っていた。ローテーブルの上にはスマホとテレビのリモコン、そしてアロマストーン。  部屋を見回す。テレビ、レースのカーテン、ベッド。普段と変わったところはない。  それなのにする鉄の匂い。楓はゆっくりと視線を自分自身の体に移した。 「ひっ……」  お気に入りの白のブラウスの腹部が真っ赤に染まっている。何度も何度も刺されたような赤い染み。腹部だけ赤色のブラウスといってもおかしくないくらいだ。  赤が濃い場所はブラウスに切れ込みが入っていて、それが数十か所以上ある。恐る恐る自分の腹部を撫でるが、痛みはない。ブラウスを捲り上げて確認したが、お腹には傷一つない。 「どういうこと……」  自分は夢でも見ているのだろうか。  そう思った時、頭に強烈な痛みが走り、脳裏に映像が流れた。
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