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楓が吹き出すと、陸人もつられるように笑った。長門陸人は、楓の2つ上の地元からの付き合いで兄妹のように過ごしてきた。
都会の雑踏のなかでもすぐに見つけられる金髪と2メートル近くある体格のおかげで、いつもいい目印になっている。
と、いうのは楓だけの秘密だ。もしも陸人が聞いたらいじけてしまう。
「電話の相手、蓮だろ? 途中で通話切ったらあとで機嫌悪いぞー」
「どうせすぐに会うからいいの。朝だって通勤ギリギリまで電話してたしね。それに、せっかく久しぶりに陸人に会えたんだからいろいろ話そうよ」
「楓がいいなら、別にいいけどさ」
陸人は顔をクシャっとさせて笑う。その笑顔は子供の頃から変わらない。嬉しそうな笑顔に楓も嬉しくなる。
7月もなかばになると、夕方とはいえ、歩いているだけで汗が止まらない。ハンディフォンを顔に向けながら他愛もない話をしていると、どこからか洋楽が聞こえてきた。
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