1. Xデーに殺された私

5/27
前へ
/369ページ
次へ
 楓が吹き出すと、陸人もつられるように笑った。長門陸人(ながとりくと)は、楓の2つ上の地元からの付き合いで兄妹のように過ごしてきた。  都会の雑踏のなかでもすぐに見つけられる金髪と2メートル近くある体格のおかげで、いつもいい目印になっている。  と、いうのは楓だけの秘密だ。もしも陸人が聞いたらいじけてしまう。 「電話の相手、蓮だろ? 途中で通話切ったらあとで機嫌悪いぞー」 「どうせすぐに会うからいいの。朝だって通勤ギリギリまで電話してたしね。それに、せっかく久しぶりに陸人に会えたんだからいろいろ話そうよ」 「楓がいいなら、別にいいけどさ」  陸人は顔をクシャっとさせて笑う。その笑顔は子供の頃から変わらない。嬉しそうな笑顔に楓も嬉しくなる。  7月もなかばになると、夕方とはいえ、歩いているだけで汗が止まらない。ハンディフォンを顔に向けながら他愛もない話をしていると、どこからか洋楽が聞こえてきた。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

210人が本棚に入れています
本棚に追加