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「雑に電話切ったから蓮、怒ってんじゃん?」
「えーそうかなぁ。ただの心配性だよ」
「これを心配性の一言で片づける楓はすごいな」
着信履歴20件。さっきから5分も経っていないのに。と、楓は思うがおかしいとは思わない。
蓮からの着信履歴最高は100件越え。じゃあ早く電話に出ればいいという話なのだが、夜中の着信音はオフにしてあるから朝まで気づかないのだから仕方がない。
それが日常だからもう慣れてしまった。
「あ、ほら蓮いたよ。おーい!」
雑踏の向こうに蓮の姿が見えた。黒髪で爽やかな彼は、すぐに楓たちの存在に気づく。
仕事帰りの飲み会ということもあって、今日は白シャツにグレーのパンツスーツだ。休日と違い、ワックスで固めた髪が営業やってます、という感じで楓は好きだ。
陸人が楓の先を歩いて人避けをしてくれるおかげですぐに蓮の元へ辿りついた。
「楓、すぐに電話でないと心配するだろ」
「ごめん――」
「やっほ、楓! それと陸人も」
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