P9 素敵なお友だち

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 今日もとても良いお天気でしたので、お互いの装いや美容法など、女性同士ならではの楽しいおしゃべりに花が咲きました。  美味しいお菓子や可愛らしい小物、流行りの恋愛小説に芝居にやんごとなき皆様の秘め事、楽しい話題はつきません。 「それにしても羨ましゅうございますわ、ご主人にいつも大切にエスコートされていて。先日の夜会の時も、素晴らしいファーストダンスにすっかり見惚れてしまいましたわ。あの氷の貴公子を射止めるなんて、どんな馴れ初めでしたの?」  うっとりと口にされた言葉に、一瞬にして背筋が凍りました。  そういえば、わたくしたちの馴れ初めはどうだったのでしょう?  ある日旦那様がお父様に求婚の申し出にいらっしゃって、そのまま婚約が成立したのです。  それ以前は夜会などでお見掛けすることはございましたが、直接お話することはございませんでした。  旦那様はなぜわたくしに求婚されたのでしょう?今まで全く考えもしませんでした。 「うふふ、内緒ですわ」  内心の焦りを微笑みでごまかします。 「ご主人とはいつもどんなお話をしていらっしゃいますの?」  興味津々のプルクラ様。 「そうですわね……」  旦那様が日頃口にされるのはやれどこの領地で大雨が降っただの、どこそこでは孤児の数が急に増えただの、つまらないものばかりでございます。  それをあのお方と毎日毎日飽きもせずに話しておられて、わたくしとはどのような会話をしているか、なかなか思い出せません。 「お仕事で赴かれた土地の宝石や工芸品ですとか、季節の美味しい食べ物のお話をしてくださいますわ」  嘘ではありません。  旦那様は各地の特産品についてもあの方とよくお話になっております。  ……わたくしとは……いったいどんな会話をしていたでしょうか……??
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