P2 社交の華

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 幸い、大夜会の日は王宮に控室が用意されております。当タシトゥルヌ侯爵家のような有力な大貴族であれば、控室もなかなかに立派なもので、宿泊しても充分快適に過ごすことができるのです。  先に屋敷に戻るという旦那様に、本日は王宮に泊まる旨をお伝えして、皆様と楽しい時間を過ごしました。  屋敷に帰れたのは翌日の夕方でした。  旦那様はちょうどお仕事から戻られて、とてもご機嫌でした。何でも今進めておられる大切なお仕事が、今日はずいぶんとはかどったのだそうです。あと少し詰めれば実を結ぶと、とても充実したお顔で喜んでおられたので、わたくしも嬉しくなりました。  旦那様が功績を上げれば、わたくしの評価もまた上がるでしょう。  わたくしたち夫婦は社交界の憧憬(どうけい)羨望(せんぼう)の的なのでございます。  まだ仕事が残っているからと、旦那様があの方を伴って夕陽がいっぱいに溢れる執務室に入られるのを見送り、わたくしは使用人たちに命じて湯を使って早々に身を休める事に致しました。何しろ夕べは一晩中踊り続け、あらゆる方々とおしゃべりしてきたのです。すっかり疲れがたまっておりました。  旦那様はまだまだお仕事が残っているので、お食事は執務をしながら召し上がるそうです。わたくしは先にお夕食をいただいて、床に就きました。
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