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顔合わせの日、未婚の侯爵令嬢とは思えないような、派手で露出の高い装いの彼女に対し、頭痛をこらえながら何とか笑顔を作ってこう言ったことを、今でも昨日の事のように覚えている。
「パトリツィア嬢、これは政略結婚です。お互いに恋愛感情を抱くのは難しいでしょう。
それでも、双方が協力して努力すれば、家族として温かな愛情のある夫婦になることはできるかもしれません。
私とともに歩む努力をしていただけますか?」
「もちろんですわ」
傲慢な笑みを浮かべ、軽く鼻を鳴らして即答した彼女の表情を見て、ああこれは勘違いしているだろうな、と思った。
彼女の頭の中では俺が一方的に彼女に惚れ込んでいて、彼女が愛を返せないとわかっていても、せめて家族としてやっていくことを望んでいる事になっているのだろう。
しかし、時間はたっぷりある。少しずつ歩み寄りながら誤解を解いていけば良い。あの時はそう思ってしまった。
思えばあの時ちゃんと何らかの手を打っておけば良かったのだ。
しかし俺は高位貴族の男性なら誰も相手にしようとしない、いわくつきの女性を王家から強引に押し付けられた形で娶る事にある意味安堵していた。
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