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E11 成立しない会話
夜、だいぶ疲れて退庁すると、パトリツァはまだ帰宅していないとの事だった。
なんとイプノティスモ家の次男とディナーの約束があるのだとか。
確かに「今日は仕事で遅くなるから先に夕飯を済ませておくように」とは言っておいたが、まさか独身男性と二人きりで、グランメゾンの休憩室付き個室でディナーとは……
俺もさすがに啞然としていたが、いないものは仕方がない。
それにしても、こんな時間まで男と遊び歩いているなんて……
下手な噂が立って双方の家名に瑕がついたらどうするつもりなんだろう。
遊ぶにしても、もう少しうまくやってほしいものだ。
「う~ん、どんどん深みにはまっちゃってるね。さすがにこれは度を越しているから、何とかした方が良いんじゃない?」
ディディもさすがに苦笑い。
確かに、このままではあまりに目立ちすぎる。
社交界で噂が立つようでは、適当に奴らと接触させて、相手の出方を見ることも難しくなる。
「……いくらなんでもこれは、さすがに話し合わんといかんだろうな……」
どうにも気が進まないが、彼女が帰宅したらゆっくりと時間を取ってきちんと話し合った方が良さそうだ。
パトリツァのことを考えると、もはやため息しか出ない。
頭を抱えながら執務室に戻る途中、子供部屋の前を通ると、アナトリオが風呂を嫌がって大泣きしていた。
ひっくり返ってバタバタしている姿も、見ているだけなら愛らしいが、乳母たちは困り果てている。
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