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「うわ可愛い!ね、僕一緒に入ってもいい?」
ディディが目をキラキラさせながら突拍子もない事を言いだした。あまりに意外だったのか、一瞬あたりの空気が凍り付く。普通、貴族の子弟が家族と一緒に入浴することはあり得ない。
戸惑う乳母やメイドを前に「やっぱりダメかな?」としょげた様子で首を傾げていたが、ディディの帰宅に気付いたトリオが泣き止んで「でぃ~」と抱きついてくると、そのまま抱き上げて「ね、一緒に入ってあげていい?きっと水が怖いんだと思うんだ」と再度訊ねた。
「でぃ~?」
と彼にしがみついたまま、彼の仕草を真似して上目遣いで訊ねてくるトリオ。
「僕と一緒にお風呂、入ります?」
視線をトリオに合わせてにこにこと言うディディ。
「だぁ!!」
意味がわかっているのかいないのか、にこにこと笑うトリオ。
……結局、大人用の浴室に湯を用意して、彼にトリオと一緒に入ってもらうことになった。非常識と言えば非常識かもしれないが、致し方ない。可愛いは正義なのだ。
幸い、彼は幼少時に騎士団で修業をしていたので身の回りの事は一通り自分でできる。湯の支度だけさせればあとは彼に任せておけば大丈夫だろう。
トリオは風呂の中でたっぷり遊んでもらったらしく、上機嫌であがってきた。
よほど楽しく遊んで疲れたのだろう。
身体を拭いて寝間着を着せられたあたりからこっくりこっくり眠りかけている。
「ちょうどいいからこのまま寝かしつけちゃおう」
愛おしそうにトリオを抱き上げたディディがそのまま子供部屋に連れて行った。彼の腕の中で気持ちよさそうに寝入っているトリオは、そっくりの髪色もあいまってまるで彼の実子のようだ。
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