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悔しいですが、大量の書類を抱えて早足で歩いていても、あの方の優雅で儚げな美しさは損なわれません。口汚く罵られても、控えめな笑みを絶やさず、丁寧に対応されます。
あの取り澄ました顔を嫉妬や屈辱で歪め、はしたなく喚かせることができたなら、どれほど溜飲が下がる事か。
それに引き換え、わたくしはなんと惨めなんでしょう。
社交界の華であるわたくしは日々茶会や夜会に忙しく、刺繍のような下らない手慰みにうつつを抜かす暇はございませんでした。絵を描けばドレスが汚れてしまうと、今まで絵筆を握った事すらございません。楽器など指が傷むとこの年齢になるまで一度も触った事がなく。
ですから、今日のように誰からもお招きがない日には、何をして良いのかわからず途方に暮れてしまうのです。
わたくしはこの家の中だけでなく、社交界でももはや居場所はないのでしょうか。そんなはずはございません。
わたくしこそがご令嬢ご婦人方の羨望の的、社交界の華でございます。
しみったれた刺繍や汚らしい絵画のような賤しい趣味がなくても、その華やかな輝きに誰もが憧憬と称賛の眼差しを送るべきなのです。
わたくしは憤然として自室に戻りました。
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