D8 すれ違う夫婦

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D8 すれ違う夫婦

 今日は仕事が(はかど)ったのはいいのだけど、すっかり帰りが遅くなってしまって、あたりはもう真っ暗。  さすがにちょっと頑張りすぎたかな?  もうお腹ぺこぺこだよ。  家についたら、パトリツァ夫人はまだ帰ってないらしい。  朝のうちに「今日は遅くなる」と伝えてあったにしても、さすがに遅すぎない?  どうやらエスピーア殿とディナーに行ったらしい。  それも高級料亭(グランメゾン)の休憩室つき個室で。  え、えええええ!?  さすがにまずいんじゃないのかな?  いや、高位貴族なんだから外食するのがそれなりの格のあるレストラン(グランメゾン)じゃなければいけないのはわかるんだよ。  でもさ、未婚の男性と二人っきりで個室に夜遅くまでこもっているのは……  それも、休憩室つき。つまりベッドのある部屋だよ。  さすがに色々と疑われても仕方ないんじゃないかな?  もともと奔放(ほんぽう)な人だとわかっていて結婚したから、エリィも今更ショックを受けたりはしないみたいだけど……  ここまで人目をはばからずに遊び歩かれると、おおっぴらに噂が広がってしまえば家名に(きず)がつく。  さすがに今回ばかりはエリィも呆れかえっていた。  僕もちょっと呆れながら私室に戻ろうとすると、子供部屋でアナトリオがひっくり返って駄々をこねていた。どうやらお風呂を嫌がってるらしい。  困っている乳母たちには申し訳ないのだけど、ジタバタ暴れる姿も可愛らしい。もうそうやって自己主張を始める年頃になったんだね。  ついこの間生まれたばかりだと思ったのに、子供の成長ってあっという間だ。  そうだ、いい事考えた。
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