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「ああ、なんとお美しい」
半刻ほど散策を楽しんだ頃でしょうか?
とても艶っぽい女性の声がして、わたくしは振り向きました。
感極まったような声を出したのはティコス男爵家の三女、プルクラ嬢。
十七歳というお歳に似合わぬ妖艶な魅力の持ち主で、緩いウェーブのかかった艶やかな黒髪と、潤んだようなヘイゼルの瞳が、豊満な肉体とあいまって何ともいえぬ色香を漂わせていらっしゃいます。
その美貌に嫉妬したものたちが憶測で好き勝手に申すものですから、数々の貴公子との噂がございますが、ご本人はいたって素直で人懐こいご令嬢。
わたくしのことも”緋牡丹の君”と呼んで慕ってくれています。
「ごきげんよう、プルクラ嬢。先日の夜会以来ですわね」
「ごきげんよう、タシトゥルヌ侯爵夫人。お邪魔をしてしまい、申し訳ございません」
「とんでもないわ。こんな素敵な日ですもの、一緒にお散歩を楽しみましょう」
「お美しいだけでなくお優しいのですね。皆さま憧れの貴婦人、緋牡丹の君とご一緒できるなんて、今日はなんとすばらしい日でしょう」
わたくしは木陰のベンチに腰掛けて、しばしの間プルクラ嬢とのおしゃべりを楽しみました。
聡明で機知にとんだプルクラ嬢とのお話は実に面白く、いくらお話しても話題がつきません。
陽が高くのぼってもまだまだおしゃべりが足りないと感じたわたくしは、彼女を近ごろ人気のカフェにお誘いしました。
「まあ、わたくしがご一緒でよろしいのですか?」
目を輝かせて喜んでくれた彼女のなんと愛らしいこと。
わたくしたちはカフェで美味しいコーヒーとお菓子を楽しみながら、時が経つのを忘れていろいろなお話をしました。
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