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その晩は持ち帰った政務をディディに任せ、またパトリツァと二人で夕食をとりながら、彼女のとりとめもない話を聞くことになった。
プルクラ嬢とどんな話をしたか、どんなものに誘われたか。
あの小娘はなかなかに人の心をつかむ術に長けているらしく、パトリツァの自己顕示欲をうまく満たすように持ち上げながら、自分の懐に入れようとしているようだった。
次はティコス家に招待されているらしい。
是非楽しんでおいで、と許可を出すと上機嫌で食事を終えてくれた。
数日後、今度はティコス男爵家に招かれたというパトリツァとまた食事をとった。
彼女のまとまりのない話に相槌を打ちながら、「妻の新しい友人がどんな人物なのか気になる」という口実で、どんな話題が出たのか、屋敷の様子はどうだったのか、根掘り葉掘り聞いていく。
さすがに屋敷の調度や使用人の様子などを聞いた時はいぶかしがられたが……
「屋敷に普段から飾っているものは、その屋敷の住人の好みをそのまま反映するからね。あらかじめわかっていれば、手土産やおりおりの贈り物を選ぶ参考になるんですよ」
と答えると疑問を抱くことなく納得してくれてほっとする。
この時ばかりは単純で深く物事を考える事のない彼女の気性に助けられた。
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