E13 侮れない小娘

3/4
前へ
/151ページ
次へ
 話を聞くに、ティコス家やイプノティスモ家ゆかりの商会で扱う品だけでなく、南部の下位貴族たちゆかりの品も多数所持しているようだ。  南部の国境付近に領地があるイプノティスモ家ならともかく、中部の海岸沿いに領地を持つティコス家の屋敷で、周辺の特産物よりも南部の品物が目立つのはいささか不自然に思う。  その南部貴族たちも、おそらくは彼らと同じ穴のムジナだろう。主要都市の治安維持を担う警邏(けいら)隊から密偵を送って内情を探る事にしよう。  南部の大物教会派貴族ゆかりの品とおぼしきものもあるようだが……はたして、どの程度の関りなのか。  こちらは注意深く探らねばなるまい。うかつにちょっかいをかけて逃げられては元も子もないからな。  パトリツァは芝居見物に誘われてただけではなく、彼女が頻繁に訪れている教会のバザーや炊き出しなどの活動にも参加しないかと誘われたらしい。  あまり深入りするのは剣呑だとは思うが、バザーや炊き出しならば他の人間の目も少なからずあることだし、おかしな事も起きないかもしれない。  日頃「モテない偽善者のいい子ぶりっ子」と疎んじている奉仕活動に参加することでやりがいを感じられれば、少しは貴族の務め(ノブリスオブリージュ)というものも理解できるかもしれない。  貧民街の実態を知って、少しは領地経営に関心を持とうという気になってくれれば儲けものだ。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加