ビジュアル系弁護士シンゴ(海野次生 version)

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ビジュアル系弁護士シンゴ(海野次生 version)

「まァまァ、そんなカッカッしないで。ピザでも食べて落ち着いてください」  マリアは屈託のない笑顔でピザを勧めてきた。 「うるさい。知るか。そのピザは持っていけ。二度とオレの前に姿を見せるな」  こうなれば実力行使も(いと)わない。 「困りますよ。示談の件もありますし」  シンゴは困り顔だ。 「知るか。示談なんて。あとで書類でも送って来い。納得したらサインしてやるから」 「そんなァせっかく嵐の中、来たんですから」 「うるさい。マジで出ていかないなら考えがあるぞ」 「フフゥン、仕方がない」  ビジュアル系弁護士の目が光った。 「えェ?」 「鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス  天に代わってお前の悪事を!」  ビジュアル系弁護士はオレを指差し、どこかで聞いたような啖呵をきった。 「なんだって、信長気取りか?」   「海野さん。あなたは西園寺麗香さんと結婚するため長年付き合ってきた野々宮沙羅さんが邪魔になったんだ」  シンゴは余裕の笑みを浮かべた。 「なにを言ってるんだ?」 「バックレんなよ。あんたがデリバリー サービスをアリバイにして、野々宮沙羅さんを美浦市の岬から突き落として殺害に及んだのはバレてんだ!」  マリアもオレのことを指差した。 「ぬうゥ、何度も言わすな。オレは野々宮沙羅なんて知らない。いったい誰なんだ?」 「ああァら、じゃァ本人の前で言ったら。沙羅なんて知らないって!」 「ううゥ」  何なんだ。コイツらは。  そんなハッタリがオレに通用すると思ってるのか。  間違いなく野々宮沙羅は死んでいる。  このオレの手で崖から突き落としたんだ。
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