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ビジュアル系弁護士シンゴ
「今夜、美浦半島一帯に、竜巻注意報が発令されたんですよ」
シンゴは落ち着いたトーンで解説をした。
「何ィ、まさか竜巻で?」
そういえば岬へ向かう途中、ラジオで注意報を聴いた。
「あなたに崖から突き落とされた彼女は海上で発生した竜巻に吹き飛ばされて、宙に舞い奇跡的にトラックの荷台の幌の上に落下したんです」
シンゴは指先をクルクル回し、竜巻のジェスチャーをした。
「えェ?」トラックの荷台の幌に。
「そうです。まさに『神の見えざる手』によって彼女は九死に一生を得たんですよ」
「バカな」
「でも喜んでください。あなたはその竜巻のおかげで殺人犯にならずに済んだんです」
「うッ」
「殺人未遂事件の刑期は死刑、もしくは無期懲役、または五年以上の懲役です。命には別状ないのでおそらく七年ほどの実刑だと思われます」
「ぬうゥ」七年ほどか。
「もう一度、言って差し上げましょう。真犯人はあなたに決定!」
またマリアはオレを指差した。
「フフッ」思わずオレは苦笑した。
沙羅が生きていたなんて。
どうやら諦めるしかなさそうだ。
「さァ警察に逮捕される前にピザをどうぞ」
またマリアはオレに勧めた。
「フフゥン、どうやら運のツキのようだ」
オレは冷えたピザを口に運んだ。
あまり美味くはない。
やはりピザは熱々の方が美味しいだろう。
このビジュアル系弁護士たちと関わった事が間違いの元だった。
しょせん『神の見えざる手』には逆らえないと言うことだ。
遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえた。
観念するしかないだろう。
THE END
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