海野次生 version

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海野次生 version

 そんなオレにもどうやら運が巡ってきたようだ。  コネも学歴もないオレだ。  イケメンだが、ホストの世界でも決してトップにはなれない。  やはり上には上がいるモノだ。  所詮、オレ程度のレベルではどこのクラブへ行っても二番手、三番手に甘んじるしかない。  オレの名前は海野次生(うんのツグオ)。  小学校の頃から『運のツキオ』とあだ名をつけられた。  しかしそんなオレにもやっと運命の女神が微笑んだ。  西園寺麗香との運命的な出逢いだ。  あの夜、オレはヤケになっていた。  ホストクラブのナンバーワンに圧倒的な差を見せつけられたからだ。    ホストをしているのがバカバカしくなった。    そんなとき、深夜の繁華街で麗香たちが半グレ集団に絡まれていた。  エスコートする男性たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。  麗香だけが半グレたちの恫喝に一歩も引かない。さすがお嬢様だ。プライドが高い。 「ケッケケ、いいじゃん。お嬢様。そこのクラブで一緒に飲もうぜ」  なんともゲスなナンパだ。馴れ馴れしく肩を組んだ。 「触らないで。あなた達みたいな半グレと飲みに行くわけ無いでしょう」  負けずに手を振り払い上から目線で断った。 「おいおい、拉致ってマワしちゃうぞ」  相手は四人だ。全員、派手なタトゥをしていた。見るからに怖ろしい。  お嬢様のお付きはさっさと逃げていた。  通行人も見て見ぬ振りだ。  下手に関わっても怪我するだけ損だろう。 「おいやめろよ。彼女が嫌がってるだろう」  しかしオレは半分、ヤケになって半グレ集団から彼女を守った。 「なんだとォこらァ、殺すぞ!」  いきなりオレは袋叩きだ。
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