計画遂行

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計画遂行

 夏の嵐の晩、計画を実行した。  絶え間なく降り続く雷雨がフロントガラスに叩きつけられた。  もの凄く視界が悪い。  ラジオでは軽快な音楽のあと緊急の天気予報が伝えられた。 『美浦市方面で竜巻注意報が発令しました。外出なさる方はくれぐれもお気をつけください』 「チィッ、竜巻かァ……」  しかし今さら計画は変更できない。  すでに、野々宮沙羅をドライブに誘い睡眠薬を入れた缶ビールを飲ませ眠らせた。  このまま美浦市の岬まで車を走らせ、崖の上から野々宮沙羅を突き落とすだけだ。  緊張感でハンドルを握る手にも汗が滲んだ。  数カ月前から週2回デリバリーでピザを注文し、顔を合わせることなく玄関で受け渡すようにしておいた。      これで万が一、疑われてもアリバイは立証出来るはずだ。  オレは家から一歩も出ていない。  簡単なことだ。    岬の崖の上から野々宮沙羅を突き落とし、これでオレは自由だ。  あとは事故に注意して家路に急ぐだけだ。  帰宅するとグッタリした。  なにもやる気が起きない。  やはり愛していた沙羅を亡くした喪失感は大きい。  しかも自らの手で葬ったのだ。    だがこれはオレにとって最後の賭けだ。  学歴もコネもないオレには西園寺家は夢のチケットだ。  夢を叶えるには是が非でも手に入れなければならない。  オレは玄関に置いてあったデリバリーされたピザを一瞥(いちべつ)し、玄関マットに挟んである領収証を手に取った。 「フフゥン」  万が一の時はこれがアリバイとなるだろう。    
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