ビジュアル系弁護士シンゴ

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ビジュアル系弁護士シンゴ

「なんだって?」  まさか、野々宮沙羅のことか。  そんなはずはない。    こんな短時間にオレまで突き止められるはずはない。  だとすると、この子たちは何者なんだ。 「夜分、遅く申し訳ありません。海野さんですね?」  今度は横から男が現れた。 「え、ええェそうですが」  何者なんだ。  このミュージシャンみたいなイケメンは。 「ボクはビジュアル系弁護士のシンゴと申します」  横にいた金髪のイケメンが自己紹介をした。胸元のヒマワリの弁護士バッチを親指で示した。 「えェ、ビジュアル系弁護士?」  なんだ。それは。ドッキリなのか。  オレは辺りを見回した。他にカメラスタッフなどは見受けられない。  それにしてもイケメンだが胡散臭い男だ。  だいたいこんなロックミュージシャンみたいな金髪のロン毛の弁護士なんているはずがない。 「私は天才美少女ミステリー作家の織田マリアよ」  さらに美少女が自己紹介をした。 「はァ織田マリ?」 「く、お黙り。織田マリアよ。マリアとお呼びなさい」 「はァ、マリア。いったいなんですか。こんな時間に」   「だって、さっきはいなかったじゃん」 「な、さっき?」 「ええェ、先ほどもこちらへ寄らせてもらったんですよ」  ビジュアル系弁護士が説明した。 「ウチへ?」オレは聞き返した。   「そうよ。デリバリーでピザを届けてもらったでしょ。ほらァそこにある」  勝手にマリアはエントランスから玄関口へ入ってピザを見つけた。 「ううゥ」  なんでピザをデリバリーしたことを知っているんだ。嫌な予感がした。  ワキ汗が滲んだ。 「去年、あなたは横浜の繁華街で半グレ集団に絡まれていた西園寺さんを助けようとして怪我を負いましたね」 「えェ、まァそうですが」  いったいあの事件がどうしたって言うんだ。  ザワザワと胸騒ぎがしてきた。
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