ビジュアル系弁護士シンゴ

1/1
前へ
/13ページ
次へ

ビジュアル系弁護士シンゴ

「あの暴行事件で海野さんは入院生活を余儀なくされましたね」  弁護士のシンゴは気の毒そうに眉をひそめた。 「ええェ、そうですが」わき腹をさすった。  半グレたちに袋叩きにされてアバラを折った。  今も少し痛む。  おかけでホストの仕事にも支障があった。 「その主犯格の少年がようやく逮捕されたんですよ」 「はァ、そうですか」  やっと捕まえたのか。まったく日本の警察もトロい。  さっさと捕まえれば良いものを。 「ボクはその少年の国選弁護人を担当することになりまして」  ビジュアル系弁護士は説明した。 「はァ国選弁護人?」  このビジュアル系弁護士が。 「ええェ、まだ未成年の少年で初犯と言うことなので示談交渉に伺いました」 「ぬうゥ、示談交渉ですか?」 「そうよ。ところがさっきは留守だったんだけど、その後、ピザのデリバリーが来たでしょ」  マリアはピザの箱を指差した。 「ああァ」そういう事か。 「たぶん風呂に入ってたのかな。インターフォンが聞こえなかったんだ」  苦しい言い訳をした。  しかし計画が狂った。まさか国選弁護人がこんな真夜中にウチへ訪ねて来るなんて思いもしなかった。 「ねえェ、こんな時間にピザなんてヤバいよね」 「えェ、ヤバい?」 「だってカロリーが高いから太るでしょ?」 「なるほど。そういう事か」  さすが女の子だ。ダイエットにはうるさい。   「でも良いニオイ。悪魔的よねえェ。真夜中のピザって!」  美少女はクンクンとピザの匂いを嗅いだ。 「まァ、どうぞ。ほしいだけ召し上がってください」  どうせオレは食う気がない。 「わァーッ、ありがとう。じゃァさっそく戴くわァ」  まるで待っていたようだ。 「おいおい、ごちそうをしてもらうために来たわけじゃないんだから」  傍らからシンゴが忠告した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加