ビジュアル系弁護士シンゴ

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ビジュアル系弁護士シンゴ

「だって海野さんも最後の晩餐だから食べた方が良いですよ」  マリアはオレにもピザを勧めた。 「なッ、あのねえェ。最後の晩餐って」  さっきから失礼な女の子だ。 「実は犯人の少年はオレオレ詐欺にも加担してまして余罪もあるんです」 「それならいくら未成年でもちゃんと償わせないと」  オレオレ詐欺や闇バイトなど半グレの事件は後を絶たない。 「ですから海野さんと西園寺さんの件だけでも示談にしていただけないかと」  ビジュアル系弁護士は頭を下げた。 「ぬうゥオレは袋叩きにされて気づいたら病院へ搬送されていたんですよ」  相当、加害者の半グレたちには怨みがある。 「でも逆に良かったじゃん」  マリアはあっけらかんと応えた。   「なにが?」 「西園寺麗香さんと出逢えて。西園寺家が賄ったんでしょ。入院費も治療費も」 「そりゃァ仕事もできなかったからね」   「それに車も買って貰ったんでしょ。真っ赤なポルシェ!」 「え、それは送り迎えを」 「早くホストに見切りをつけて、逆玉の輿(ぎゃくタマ)に乗った方が良いよォ」  マリアは昔からの友達のような口をきいた。 「ぬうゥ、余計なお世話だよ」  まったくデリカシーのない子だ。  そう言っている間に、マリアは包装を解いてピザに手を伸ばした。 「わァ、少し冷めちゃったわね。どうして?」 「えェ、どうしてって?」 「だってさァ、こんな嵐の晩に無理を言ってデリバリーして注文したんでしょう。よっぽどお腹が空いてたんじゃないの?」 「それは、まァ」  失敗した。もっと早くピザをリビングへ運ぶんだった。  まったく疫病神みたいなヤツらだ。  一刻も早く引き取ってもらわなければ。
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