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「もうねぇ、『うしろの風子』はおしまいっ!」
「ん?」
「そうっ! あたしは『うしろの風子』ではないっ、『となりの風子』であるっ」
「なんだそれ」
「いいから、早く早くっ」
ぎゅっと僕の左腕に身を寄せた風子に、僕もちょっとだけ頬を寄せた。
思い切り伸ばした右手でシャッターを押す。
なるほど。
『うしろの風子』改め、『となりの風子』か。
「ねぇ、見せて見せてっ! うわー、空がきれーい!」
つい見とれてしまった、画面を覗き込む風子の横顔。
ちょっと咳払いをして、僕も風子にそっと肩を寄せて画面を見る。
ふたり初めての記念撮影。
風子はちゃんと写真に写っていた。
これからはずっと、僕の『となりの風子』でいて欲しいな。
笑顔いっぱいの風子が覗き込んだ白いスマートフォンの中、僕と『となりの風子』の後ろには、抜けるような秋空がどこまでもどこまでも続いていた。
おわり
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