エピローグ 仲良くならんで

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 その瞬間、どどっと教室を包み込んだ笑い。  これは、目に見えるものしか信じなかった僕が、目に見えない『うしろの風子』を信じたから、手に入れられた笑顔だ。  ぜんぶ、風子のおかげ。  目に見えるものだけでは、その人の想いも、その人の真の姿も理解することはできない。  本当にたくさん、僕に大切なことを教えてくれた。 「えっと、コーヒーとクッキー、ここに置いておくわね?」 「ありがと、母さん」 「風子さん、よかったら、夕飯食べていかない?」 「えっ? いいんですかっ? お母さま、あたしっ、お料理のお手伝いしますっ!」 「ほんと? じゃあ、もうこのままウチのお嫁さんになって?」 「うわ、母さん、なにを勝手なことを言って――」 「あああ、あたしっ、おっ、おっ、お嫁さんになりますっ!」 「あはは。光平、よかったわねー。ごゆっくりぃー」  艶のあるフローリングには、傾き始めた陽光が描くレースカーテンの美しい波模様。  いつもの、僕の部屋。  いつもと違うのは、風子の笑顔がすぐそこにあること。 「お嫁さんだって。えへへ。あー、これこれっ、この本。ねぇ、いまちょっとだけ見ていい?」
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