8人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいけど、劇の台本はどうするんだ? 今日と明日で書いてしまわないと間に合わないぞ?」
「もぉー、せっかく光平の部屋に戻って来たんだから、もうちょっとだけゆっくりさせてよぅ。もうねぇ、このベッドにぃー、こうやって腰掛けたかったのっ!」
ベッドに腰掛けて足をパタパタさせた風子。
僕は「はいはい」なんて言いながら、ポケットから取り出したそれをそっと机の上に置いた。
真っ白な、僕のスマートフォン。
あの日、『うしろの風子』と出会わせてくれた、僕の宝物だ。
「あー、光平のスマホ、修理から戻って来たんだねー」
「うん。昨日の夕方、ショップに取りに行ったんだ。……ん? どうした?」
「へへーん」
満面の笑みの風子。
その笑みの前で振られているのは、スカートのポケットから取り出された風子のスマートフォン。
なにがそんなに嬉しいのか、その顔を見てこちらも思わず笑みが出る。
すると風子は、その笑みのままよいしょっとベッドから立ち上がると、それから僕の前に身を乗り出して、その真っ白なスマートフォンをそっと机の上に置いた。
僕のスマートフォンの、となり。
行儀よく、そのふたつがそこに並ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!