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画面の端、顔の輪郭の向こうに黒い影がうごめいている。
ハッとして、思わず目をつむった。
なんだ?
いまこの部屋には僕しか居ないはずだ。
夕暮れに残る夏の余韻のせいで、まだまだ室温は高い。しかし、その暑さによるものではないと分かる汗が、あっという間にじわりと僕の額を覆った。
目を開けようか、それとも目をつむったまま部屋から出ようか、そう迷っているうちにいよいよ強くなった背後の気配。
それから十数秒もしないうちに、鉛の塊のような重みが僕の左肩にのしかかった。
「ううっ!」
『あれっ? ここどこ? あ、誰か居る!』
突然聞こえた、女の子の声。
ぞわぞわと足元から這い上る悪寒に畏怖しつつ、僕は部屋から出ようとその重い肩にぎゅっと力を入れてゆっくりと立ち上がった。
じわりと周りを見回す。
やはり、ここはいつもの部屋だ。
僕以外に誰も居ない。
『あーっ! その後ろ姿は永岡ねっ? こらぁ、永岡光平っ!』
また聞こえた。
謎の声が僕の名前を呼んでいる。
『ほら、永岡! ここだよー』
はっ?
この声は、もしかして……。
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