プロローグ

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『もう、ここ! 後ろなの! 後ろっ!』  後ろ?   誰も居ないじゃないか。  そのとき僕は、その声が僕の後ろからではなくて、もっとずっと下のほうから聞こえていることに気づいた。  右手に握られた、僕のスマートフォン。  勝手にスピーカーモードになって女の子の声を漏らしている。  電話はかかってきていない。  自動応答するような設定もしていない。  ペチリとおでこを一回叩いて、それから大きく深呼吸をする。  この不思議な現象をどうにかして理解しようと、僕は自慢の理数脳をぐるぐるとフル回転させつつ、その声が聞こえるスマートフォンを顔の前に持ってきて覗き込んだ。 「ひっ!」  すると、その自撮りモードのカメラ画面に突然映り込んだのはっ。 『よっ!』  後ろから僕の左肩に両手を掛けて、その手にあごを乗せてニコニコ笑っている女の子。  柔らかなフェアリーボブ。  ぼんやりしててよく見えないが、肩口は制服のブラウスに見える。 「え? (さくら)(だい)?」 『はいっ。(さくら)(だい)(ふう)()ですっ。というか、ねぇ永岡、ここどこ?』
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