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「いったいどこから入って来たんだ。ここは僕ん家だ。僕の部屋」
『ええっ? ここ永岡の部屋なの? いやん、ちょっと待ってっ。あたしにだって心の準備がっ』
「こら、勝手に人の家にあがり込んでおいてなに訳のわからんこと言ってんだ。人の迷惑をもう少し考え――」
そう言いながら、僕はさっと左後ろを振り返った。
「――え?」
誰も居ない。
さらに周りを見回すが、やはりこの部屋には僕以外誰も居ない。
再びゾゾッと冷たいものが背中を流れる。
『うわっ。永岡が振り返ると、風景がわぁーって動いてなにも見えなくなっちゃう。どういうこと?』
「なんだ? どういうことだ? だいたい、桜台は病院へ運ばれたはずじゃ……」
『病院? あたしが?』
スマートフォンの画面に視線を戻すと、彼女がその整った顔の眉根をちょっとだけ寄せて、僕の肩から伸び上がっていた。
「お……、お前、もしかして、死んだのか? これって、幽……」
『あー。そういえば階段から落ちる瞬間は、なんとなく記憶にあるような』
「と……、とにかく、ここは立入禁止だ。帰ってくれ」
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