プロローグ

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 いつも誰にでもヘラヘラと笑うヤツで、その八方美人ぶりのせいか、けっこう各方面で人気があるのもいけ好かない。  実際、四月の新学期早々、コイツはすぐにクラス委員長に選ばれたし。  まぁ、お調子者がその人気で委員長になるのはよくある話。  僕には無縁だ。  無縁だったはずなんだ。  ところがそのとき、さて副委員長は誰がなるのかなと完全に他人事と決め込んで窓の外を眺めていた僕に、あろうことか桜台はシタリ顔をして痛烈なひと言を投げ掛けたんだ。 『あたしの補佐、副委員長はっ、永岡光平くんを指名っ!』  油断していた僕は頬杖からガクリとあごを落とし、それから即立ち上がって猛抗議をしたんだけど、桜台はまったく取りつく島なし。 『だって、いつもきちんきちんと細かいから、きっちり補佐してくれそうなんだもん。あたしズボラだし。あはは』  そんな身勝手な理由で、僕は二年生が終わるまでずっとコイツのいい加減さに振り回される運命になってしまったんだ。  うう、イヤなことを思い出してしまった。  ま、そんないい加減な桜台にずっと腹を立ててきた僕だから、いまそのストレスのせいでこんな夢を見ているんだろう。
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