12.歌うのって楽しいなって

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12.歌うのって楽しいなって

「石垣さんを見習って、大きな口を開いて大きな声でみんな歌って」  合唱コンクールの練習中、佐保がみんなにそう指導する。柚月は佐保のアイコンタクトに小さくうなずき、伸び伸びと声を出す。  生徒たちは戸惑いながらも、佐保の指導に従う。  そんな合唱の練習が終わったあと、柚月に悠平がたずねた。 「ねえ、石垣さん。どうしたの? 急に大きな声で歌い出して」 「いや。歌うのって楽しいなって気付いただけ」  柚月はそう言って悠平に得意げにほほえむ。 「ふーん。ならいいけど」  そんな柚月に佐保は告げる。 「ねえ柚月、一緒に帰ろう」  柚月は大きくうなずいて佐保と一緒に教室を出た。神社の裏手で笑いあって以来、すっかり友達の二人。
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