13.ふかふかで温かい

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13.ふかふかで温かい

 帰り道、佐保と別れて神社の裏手に立ち寄った柚月の足元にルナがやってくる。柚月の足に体をこすりつけて甘えるルナ。 「ルナ、今日も合唱の練習楽しかったよ」  柚月がそう話しかけると、ルナはひと言だけ「ニャー」と鳴く。  あれから柚月は一人で何度か歌ってみた。ルナに向かって、あるいは鳥の羽ばたく空に向かって。けれど、ルナは猫の鳴き声を上げるだけだし、鳥は柚月の存在に見向きもしなかった。 「最初はすごく寂しかった。ルナと話せなくなって」  でも、と柚月は思う。いつかルナが言ったことがある。心を通じ合わせるのは、なにも言葉で会話するだけとは限らない、と。  柚月は足元のルナの体を撫でながら、今ならあのときの言葉の意味がよくわかった気がした。ルナの体はふかふかで温かい。  ルナはもう猫の鳴き声しか上げられない。それは柚月の能力がいつの間にか失われてしまって、柚月はもう動物と話せなくなってしまったから。でも、こうしてルナと心を通わせることはできている。  それはきっと大人の階段をひとつ登ったのだから。  柚月はそう考えながら、ルナの体をやさしく撫で続けた。 (おわり)
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