06.みんな困るだろ?

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06.みんな困るだろ?

「平岩くん。さっきはありがとう」  練習が終わったあとの放課後の教室で、柚月は悠平に声をかけた。 「石垣さんにお礼を言われるようなことは何もしてないよ」  悠平は通学用バッグに教科書を詰め込みながらこたえた。 「私が困ってる時に助けてくれたから」 「石垣さんひとりに厳しく指導するのはおかしいって思っただけ。それに歌が苦手な人に無理して歌わせることないだろうし」 「でも、思ったの。やっぱり私がクラスのみんなの足を引っ張ってるんじゃないかって。歌声が小さいせいで。それに下手だし」 「しょうがないよ、歌が下手なのは。別に歌で推薦入試を狙ってるとか、プロの歌手を目指してるってわけじゃないだろ?」 「そうだけど……」 「じゃあいいじゃん。逆にものすごく下手な歌をものすごく大きな声で歌われた方が、みんな困るだろ? 合唱なんだからさ」  悠平は柚月にそう告げ、笑いながら教室を出て行った。
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