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07.物心ついたときから
「ふうん。それで歌が下手ってことで押し通したわけね」
猫のルナが小声で鳴いた。木陰に寝転んだまま。
「うん。動物たちが集まってきちゃうと困るし」
神社の裏手には他に誰もいない。柚月の歌もルナだけが聞く。
「そうだね。柚月に動物を呼ぼうって気がなくても、あいさつされてるとか、それともなにか用事があって動物たちを呼んでるとか、そういうふうに思っちゃうだろうし。カラスたちもネズミたちも」
「どうしてこんな能力なんて身につけちゃったんだろう……」
悲しげに小声で歌う柚月。その歌声が雑木林にかすかに響く。
「身につけたわけじゃない。人間のうち何割かは歌で動物と会話できる能力を生まれつき持ってるんだぜ。お前もその一人だ」
そのとき突然、鳥の甲高い啼き声が神社の裏手に響いた。柚月とルナは声の聞こえた方を見上げる。頭上の高いところに伸びた木の枝の上に、このあいだのヒヨドリがとまっていた。
「生まれつき? そうかもしれない。物心ついたときから歌うと動物と話せたし」
「そう。お前だけじゃない。他にも歌うことで動物と会話できる力を持つ人間もそれなりにいる。だって、人間と言ったって動物の一種類に過ぎない存在だぜ」
ヒヨドリにそう言われ、柚月はひと息ぶん考える。
「たしかにヒヨドリさんの言うことは正しいと思うけど……」
ルナは木陰に寝転び、柚月とヒヨドリの会話に耳を立てている。
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