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09.本当のことではあるから
「ねえ、もっと真面目に練習してよ」
合唱の練習でリーダーの武藤佐保が生徒たちに声を出す。
「いちおう真面目にやってるけどな。でも、歌いたくもない人間に無理やり歌わせることはないって、このあいだ話し合っただろ?」
男子生徒がからかうように言い、さらに続ける。
「人には得意不得意があるから、歌うのが不得意なヤツは別に一生懸命練習しなくていいって言ったじゃん。な、平岩? 石垣?」
柚月は困惑するしかない。名指しされた悠平も困った顔。
「そりゃそうだけど、不真面目にやればいいってわけじゃない。あくまでも平均点を取るくらいは練習しようとは言ったけどさ」
悠平がそう反論するけれど、男子生徒は柚月に向かって告げる。
「でも、石垣はいつも声小さいだろ。平均以下じゃん」
名指しされた柚月は何も言えない。本当のことではあるから。
「あなたたちは不真面目な態度で練習してるから、もっとひどいじゃない。他人のことをあれこれ言える立場じゃないでしょ。石垣さんは単に歌声が小さいだけで不真面目なわけじゃないの」
佐保が男子生徒にそう言い放った。
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