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涼介の抱えている黒いモノを共有するために僕も思い切って沢山ピアスを開けてみようか、なんてことが過ぎったこともあったが、そんなことをしても涼介は喜ばないと思った。
それに何より涼介の大量に開けているピアスのことを、僕が真似することで彼の気持ちを共有どころか、なんだか涼介自身を否定しているような、うまくいえない気持ちになって結局できなかった。
「おいおいそんな顔すんなって。葬式みてぇじゃん。あとでゆっくり話すしさ。とりま俺今日、真央ん家泊まるから」
「えぇっ!!」
「美恵さんは全然いいてさ。それに高校最後の夏休みの思い出、男二人でお泊り会ってヤバくね?」
「い、いや……えっと。な、なんも用意してないのに」
「は? 女みたいなこと言うのな」
僕の言葉に涼介が大きな口を開けて笑うとベッドから起き上がった。
「てことで、美恵さんとこ行こ」
「え?」
「ここ来る前にちょうど坂道の手前で美恵さんに会ったらさ、夕飯コロッケらしくてさ。手伝ってくれたら好きなだけ食べていいよ、ってさ」
「僕に会いに来たの? コロッケ目当て?」
「両方に決まってんじゃん」
そう言うと涼介が扉を開き、いたずらっ子のような目を僕に向けながら階段を降り始めた。
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