呼吸のできない僕たちは

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※※ 「あら、涼くん身長伸びた?」 「どうすかね、真央より高いのは確かですけど」 「わっ」 涼介が僕の頭のてっぺんに顎を乗せる。一八〇センチほどある長身の涼介と違って僕の身長は百六十七センチしかない。 「あれ? 真央は縮んだ?」 「縮むかよ! 涼介が伸びたんだろ!」 確かに夏休み前よりも睨み上げた涼介の顔が数センチ高くなってる気がする。 「てことで美恵さん、伸びたみたいっす」 「ふふ、私の見立て通りね〜」 「さすが美恵さんすよね」 「でしょ。真央と涼くんのことなら、結構わかっちゃうのよね〜」 美恵がコロッケの付け合わせのキャベツをすりおろしている横で僕らはひたすらジャガイモの皮を剥いている。一畳ほどの狭いキッチンに男子高校生二人と母が並べば、身動きはほとんど取れない。 こうしてたわいない話をしながら三人でジャガイモを剥く姿は何とも滑稽だなと思いつつ、僕は全然嫌ではなかった。  (久しぶりだな) 中学まではほぼ毎日のように涼介が家にご飯を食べに来ていたため、野菜の皮むきは主に僕と涼介の当番だった。 高校に入る少し前くらいからだろうか。僕は当たり前のように学校からの帰り道、夕食のメニューについて涼介に話を振ったりしたが涼介が夕食を食べにくる機会はぐっと減ってしまった為、こんな風に三人で料理をするのはかなり久しぶりだ。
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