呼吸のできない僕たちは

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※※ 久しぶりの三人での夕食は話が弾んだ。母は涼介のバンド活動のことや卒業後は東京にいく話を何度も頷きながら聞いては、「涼くん、いつでも帰ってきてね」とあの涼介が困るほど繰り返した。 きっと母にとって幼い頃から見て知っていて可愛がっている涼介のことは我が子同然なんだろう。楽しい食事の時間は終始笑い声に包まれて瞬く間に過ぎ去った。そして僕らは美恵が洗濯物を畳んでいる間に二人で洗い物を終えると、母に言われて風呂場へと向かった。 「あー、腹いっぱい。マジでもうなんも食えねぇ」 「涼介コロッケ八個って過去最高記録じゃない?!」 「真央はもっと食え。コロッケ三個じゃ大きくなれねぇぞ」 「うっせ。ってはい」 僕が脱衣所で涼介にバスタオルを手渡すと、涼介がそれを受け取りながら着ているTシャツの裾を片方の手でまくり上げた。 涼介はバンド活動をしながら、建設現場の日雇いのアルバイトをしているため、腹筋は綺麗にいくつものラインが入っている。 「なに? 俺の腹筋ジロジロみて。やーらし」 「ば、ばか違うし。バイト頑張ってんだなって」 「ふうん」 「じゃあ、あがったら声かけて」 そう言って僕が脱衣所をあとにしようとすれば涼介の大きな手が僕の手首を掴んだ。 「っ!!」 「真央どこいくんだよ」 「は?! どこって涼介風呂入るから出るんでしょ?!」 「たまには一緒にはいろーぜ」 「な……っ」
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