呼吸のできない僕たちは

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(あたりか……) 涼介は遠慮して家にご飯を食べに来なくなったんじゃなくて、僕のことを傷つけたことを後悔した涼介はあえて家に来なくなったんだと気づく。たかが料理中の小さな不注意。ワザとじゃないし、僕にとっては気にも留めてないことだったのに。 そんな僕の知らないところで涼介にとってはそれがトラウマになってただなんて、もっと早く気づくことはできなかったんだろうか。今更この場で聞いてみようか。いや僕が真面目に聞いてたとしても涼介は恐らくはぐらかして答えてくれないだろう。 (そうだよな。涼介って……そういうやつだってわかってたのに) 後悔はいつだって遅れてやって来る。僕は心の中に浮かんだいろんなことの中から一番大事な言葉を選んで口から吐き出した。 「ねぇ涼介。明日からもっと家きて。一緒にご飯たべよ?」 「なんだよ。急に」 「だってさ。半年したらいつも一緒じゃなくなるじゃん。これから僕と涼介が一緒にする何かがどんどん最後になっていくんだよ」 「でもそれが大人になるってことだろ」 「そうかもしれない。でもできるだけ涼介と子供を楽しみたい。一緒にいたい。僕にとって涼介は『特別』だから」 僕が「えへへ」と照れ笑いすれば、涼介が頬を染めたような気がした。 「あれ、涼介顔赤い?」 「真央のせいでのぼせたんだよっ」 「だよね。次はもっと早く入るね」 「はぁ?!」 「思ったより一緒のお風呂楽しかったなって。またはいろ?」 「…………」 涼介は返事もせずにザバッと勢いよく湯船から立ち上がると、僕から顔を背けたまま浴室に手をかけた。そして扉を開けながらぶっきらぼうに「考えとく」と呟いた。
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