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「見、ないで……」
「なんで?」
「気持ち……悪いから……」
「誰が、んなこといった?」
「え……?」
思わず僕が涼介の切れ長の目を見つめれば、涼介が困ったように笑った。
「知ってたんだ。だからいつ言ってくれんのかなって」
「ど、いうこと……」
理解が追い付かない。わからない。ずっと誰にも言えずに隠れてメイクをしていた僕のことをなぜ涼介が知っているのか、なんでそんな優しい目で僕のことを見ているのかも。
「夏休み入ってすぐだったかな。俺バイトの昼飯担当で買い出し行くときに偶然、真央見かけたんだ。俺が前にあげたキャップだったからマスクつけててもすぐわかってさ」
「…………」
「……声かけようと思ったんだけど、真央が鏡見ながら一生懸命化粧品選んでたから……ごめん。声かけなかった」
「う、ん……」
じんわりと目の奥が熱くなってくる。
涼介にだけは知られたくなかった。
ずっと一緒に兄弟みたいに育った幼馴染が陰でこっそりメイクしてたなんて誰だってそう簡単に受け入れられないはずだ。
「ごめ……涼介……ごめん……っ」
自分が汚らわしいものに思えてきて、僕は頬をつたった涙を手の甲で雑に拭った。
「ごめんね……僕……っ」
「違う。謝んの俺だわ。ごめんな真央」
「え……?」
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