呼吸のできない僕たちは

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「真央のそれなぁ。ずっと気になってたんだけど? いい加減聞けば?」 涼介の言葉を僕は二度頭に浮かべた。そして涼介が言っている、それというのが僕の視線だと理解した。 「えっと……うん」 「はい、どーぞ」 「あのさ……涼介は……どうしてピアス開けるの?」 「……まぁ、ほぼ真央が想像してる通りだけどな。俺、嫌な事あると痛みと引き換えるっていうか色んな事に耐えた勲章っていうかさ。こうやって穴開けることで欲求解放してんの」 「欲求解放?」 「そう。俺は親父とあんま上手くいってないし、俺なりに母親いない寂しさもあってさ。なんかどうにも変えられない現実や自分が置かれてる状況を痛みで相殺するっていうかー……」 「…………」 「なんだろうな。俺もあんまわかんないけど、まぁ簡単に言えば大多数には到底理解できない癖だな、うん」 あっけらかんと話す涼介を見ながら、僕はやっぱり胸がチクンとした。涼介の心の傷や悩みを知っているのに自分には何もできないから。 「ごめんね。せっかく話してくれたのに僕には何もできなくて」 「ん? してくれてんじゃん」 「え? なにを?」 「ちゃんと聞いてくれた。あとそんな変な癖持ってる俺のことヤバい奴とか思わずになんとか理解しようとまでしてくれてる」 「そんなの当たり前だよっ、涼介は涼介だよ。僕にとってずっと変わんない『特別』」 「俺ら両思いだな」 「なっ……」 涼介が面食らった僕の額をツンと弾くと、ポンと枕を天井に向かって頬り投げた。グレーの枕が一秒ほど宙を舞ってすぐに涼介の手元に戻って来る。 「ちなみに真央は男と女どっちが好き?」 「なっ……ゴホッ」 思ってもみなかった涼介の質問に僕は思い切りむせた。
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