呼吸のできない僕たちは

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「んー。そもそもさ、なんでマイノリティだからって隠さなきゃいけないわけ?」 「あ、うん。そう言われたら……」 「法律で決められてるわけでもないし、犯罪行為でもない、メイクしていいのは女だけだなんて決めつけてんのは、大多数の顔も知らないどっかの誰かだろ」 涼介が首を少し窓のほうに向かって傾けると長い指先で窓の外の星を指さした。 「あの無数の星もさ。ほとんどが同じように見えるけど、なかには一等星とか勝手に名前つけられてひときわ明るく輝いてんのあんじゃん。でもあと一等星って星たちの中では浮いてるかもしんねしな。あの一等星だってマイノリティなんだよな」 (一等星もマイノリティ……) 「マイノリティって呼ばれる奴が輝いたっていいじゃん。輝きたいって、自分の人生思い通りに生きてみたいって想うの俺は間違ってないと思う。浮いたって、指さされたって、なじられたってさ。誰かに一人にわかっててもらえたらそれでいいじゃん。俺は真央のその一人でありたい」 僕はまたこみ上げてきそうになる熱いものを無理やり喉の奥に引っ込めた。涼介を困らせたくないから。涼介は僕が泣くのを見るのが苦手だって知ってるから。 「ありがとう」 「おう、どういたしまして」 そう言うと涼介がふいに身体を起こすと胡坐をかいた。僕もつられるようにして起き上がると三角座りをする。 「急にどしたの……涼介」 「今日はもう一個。大事なこと言いに来たんだよね」 「え?」 涼介が真面目な顔で僕の目を射抜くように見つめる。その真剣な目に心が騒がしくなる。 「真央はメイクの専門行くべきだと思う」 (──!)
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